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 INDEX // Step1:ベーシックグッズ // Step2:イクイップメント // Step3:ウェアリング // Step4:フットウェア
 Step5:パッキング // Step6:キャンプサイト //  Step7:食事 // Step8:ナイトライフ // Step9:キャンプライフ
 Step10:トレッキング // Step11:サバイバル // Step12:撤収 // Step13:メンテナンス

メインザック

 この10年あまりぼくが愛用しているメインザック。モンベルの『ゼロポイントWBトレッキングパック』。容量70gで、1週間くらいの山行は、楽にこなせる。WB はWishboneの略。ウィッシュボーン型のインナーフレームに支えられて、万全のハーネスシステムと合わせて、とてもナチュラルな背負い心地。ただしだいぶくたびれてきたので、次のメインザックを物色中→オスプレイかブラックダイヤモンドにする予定。

 年々進化を遂げるザック。フレームはより立体的になり体にフィット、ハーネス類も体への当りが柔らかくしかも負荷を分散させる構造になっている。コンパートメントにアクセスするジッパーは止水タイプのものがスタンダードだ。写真はOSPREYの「アトモス50」

 

サプザック

 サブザックは25〜30L容量程度がちょうどいい。メインザック同様こちらも最近はインターナルフレームで本格的なハーネスシステムを備えたものが主流となっている。写真はOSPREYの「エクリプス25+5」。

 

ハーネスシステム

 バックパネル、ショルダーベルト、ヒップベルト、チェストバンドといった構成パーツを様々にアジャストすることによって体型に合わせたベストフィットが得られる。ハーネスの調整は

 OSPREYは専用の焼成器を用いて、ユーザーの体型に合わせた形にヒップベルトを成型するという斬新なシステムを採用した。

 

テント

 長年愛用しているモンベル「アルパインテント」耐風性が高く、過酷な条件化でも安心して設営できる。ただし、平地での夏場のキャンプなどには不向き。

 独自のAフレームを採用したモンベルのムーンライトシリーズは、設営が簡単で軽量、コンパクト。バックパッカーやツーリングファンに人気のベストセラー。

 クロスフレームにサブフレームを組み合わせたジオデシック構造は、耐風性が高く、また居住空間を広く取ることができる。写真はMSRの「フュージョン2」

 バックカントリースキーやクライミングなど極力荷物を減らしたいときには、超軽量のツェルトを利用。写真はファイントラックの「ツェルト2」。ナイロンリップストップに防水透湿加工。ダイニーマラインを用いたフローティングテンションシステムでテント同様にしっかりと設営できる。積極的にテントとしても利用してもいい。なんといっても300gほどしかない重さとコンパクト性がいい。
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 タープといえば今まではオートキャンプ用の定番装備だったが、ハンディサイズで山行やトレッキングにも手ごろなものが登場している。写真はファイントラックの「フライングシェード4」。上記のツェルとと同様にダイニーマラインを採用して、立体的な形を維持し、風に強い。
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テントマット

 今、主流となっているのは、クローズドセルでセルフインシュレートタイプのフォームマット。寝心地がよく、空気を抜けば、非常にコンパクトになる。

 収納時は非常にコンパクトにまとまり、使用する時にはバルブを開いてやれば空気が入っていくセルフインシュレートタイプも、形状や機能が様々なものが登場している。写真は WX-tex「アーバーライト」。加重の掛かり方に合わせてセルの厚みが変えてあり、快適さとコンパクト性を両立させている。
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 シュラフは、季節やシチュエーションに合わせて選ぶ必要がある。写真は、左側がサマーシーズン用、右がスリーシーズン用。インシュレーターは、ともにダクロンホロフィル2で、その量がそのまま大きさの違い、保温力の違いになっている。

 インシュレーターを封入するセルを区切る縫い目に伸縮性のある糸を使い、シュラフの中で手足が自由に伸ばせる画期的なシステムを採用したモンベルのスーパーストレッチシリーズ。シェルの生地の違いや新世代のインシュレーター「エクセロフト」、さらに改良されたダウンなどの組み合わせで、使用時期やスタイルに合わせたモデルを選ぶことが出来る。
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シュラフカバー

 シュラフカバーを活用することで、フルシーズン快適な眠りが確保でき。写真はモンベルのスーパーストレッチバッグに適応したもので、シェルに防水透湿素材のドライテック3レイヤーを使用。蒸れなどがなく、夏場には、これ一枚だけで、テントも使わず、星空を眺めながら眠りにつくことができる。
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ガソリンストーブ

  コールマンPeak1ApexU:この10年あまりずっと使い続けているガソリンストーブ。ピーク1のバーナー部とタンクを別体にしたような構造で、シンプルかつ堅牢。

 こちらは、アルピニストを中心に絶大な人気を誇るMSR「ウィスパーライトインターナショナル」。小型軽量でありながら大火力が魅力。ガソリンだけでなくケロシンも使えるマルチフュエルも人気の秘密。ガソリン限定だがさらにコンパクトな「シマーライト」もある。
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燃料ボトル

 燃料ボトルは、各種の容量のものが用意されているので、ニーズに合わせて使い分けると便利。アルミ製で内部が腐食防止加工されているMSRやSIGG、マルキルなどの製品がお薦め。
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ガスストーブ

 ガスカートリッジストーブの定番プリムス4423。写真は寒冷条件でも火力を維持するパワーブースターつき。これも長年使って愛着のあるアイテムの一つ。この当時のモデルでは自動着火装置がすぐに故障していたが……。

 450ccの水を90秒で沸騰させるという驚異的な熱効率でコンパクトストーブに革命を巻き起こした「ジェットボイル」。機密性が高く、倒しても水がこぼれないカップなど、斬新なアイデアがたくさん盛り込まれていて、たしかに使いやすい。2004年度バックパッカーマガジンのエディターズチョイス賞に輝く。

 大き目のマッチ箱ほどの大きさにまとまり、しかも2700kcalの大火力を持つziipoポケットストーブ。マイクロサイズのガスストーブ開発の火付け役となった。ちょっとしたハイキングにでも気軽に持っていく気になる。
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アルコールストーブ

 極めてシンプルな構造のTRANGIAストームクッカー。軽くかさばらないので、ベースキャンプからトレッキングに出るときなどは、サブザックにこいつを入れて出かける。

 

 

  プリムス2245:もう20年以上も愛用している頼もしいやつ。かつては、ランタン用の細長いタイプのカートリッジがあって、雰囲気のあるケースにカートリッジごと収納して使っていた。

 zippoのポケットストーブと対をなす形のポケットランタン。火屋(グローブ)がガラスではなくメタルメッシュなので破損の心配がない。こちらもマイクロサイズにコンパクトになる。
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ぼくが、もっとも気にいっていて、かつ使用頻度が高いのがこのキャンドルランタン。ソロキャンプのときは、こいつとヘッドランプの明かりだけで十分。

 

コッヘル(クッカー)

 二三人のキャンプまで対応する基本キット。これくらいのものをベースに、シチュエーションに合わせてアレンジするといい。ちなみにぼくが普段使っているのは、20年もののボコボコの丸型コッヘルと角型の軍用クッカー……そろそろ最新のチタンクッカーに刷新したいところ。

 
2005年のバックパッカーマガジンエディターズチョイスに輝いたエバニュー「チタンクッカー・セラミック」。軽く腐食しないチタンだが、熱効率の問題で焦げ付きやすいという欠点があった。これは、内部をセラミックコートすることで、その欠点を見事に払拭した。

 アルミ素材にフッ素加工を施して、焦げ付きを帽子したハード仕様のコッヘル。MSR「ブラックライト」。
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食器・クックウェア

 一枚のプラスチックシートを折ってホックで止めるとカップや皿に変身する、新しいタイプの食器「オリカソ」。日本の折り紙に発想を得たというオリカソは、コンパクト性を追及するアルピニストだけでなく、大人数のオートキャンプなどでもぜひ活用したい。
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 スペイン製『AITOR』。アーミーナイフとスプーン、フォークのセット。軍用らしくオリーブグリーンのポーチに収納される。ナイフは定番のビクトリノックスに比べごつく、ラフに扱える。

 

ナイフ

 アウトドア用ナイフの基本型は、左からアーミーナイフ、シースナイフ、フォールディングナイフの三種類

 

 

 

 

 

 

Step1 : ベーシックグッズ

[ INDEX ] 
1.アウトドア装備を選ぶ基準 2.メインザック 3.サブザック
4.ハーネスシステム 5.テント 6.テントマット 7.シュラフ
8.シュラフカバー 9.ガソリンストーブ 10.燃料ボトル
11.ガスカートリッジストーブ 12.アルコールストーブ 13.ランタン
14.コッヘル 15.食器 16.ナイフ

 

■アウトドア装備を選ぶ基準■

「ニーズをはっきりさせること!」。須らくモノ選びで失敗しないコツは、一言でいえばそういうことです。いつ、誰が、どこで、何を、どうするか、それがはっきりしていれば選ぶべきものは自ずと決まってくるはずです。とくに、アウトドアの装備に関しては、『機能性』を第一に作られていますから、ニーズをはっきりさせることが、そのまま必要なモノを選ぶことに繋がっていきます。 

 ここでは、すべての装備を自分で背負ってフィールドに出かけるという条件をメインに、装備について紹介してみたいと思います。

 まず、最初に押さえなければいけないポイントは、自分が求める機能がしっかり満たされていることですね。そして、自分の背で運ぶわけですから、"軽量性"、"コンパクト性"が次のポイントになります。さらに、フィールドでは、計画段階では予測しなかった事態に遭遇することもありますから、できるだけ多くの局面で融通が効く"汎用性"もポイントの一つになります。

 

●メインザック

 ザックといえば、かつてはキャンバス地でできた土色のキスリングザックが定番でした。これは横長な形のため、うまくパッキングしないとバランスを失ってヤジロベエ状態で歩くハメになったものです。

 ところが、いつしかザックは90度回転して、縦長型が主流に。

 縦長型ザックの登場で、キスリングザックほど重心を気にする必要がなく(もちろん、今度は上下方向の重心が問題になるわけですが=『パッキング』の項で解説します)、パッキングが非常に楽になりました。と同時にハーネスシステムが発達し、ショルダーベルトにすべての荷重がかかる従来のタイプから、ウェストベルトで荷重を受け止めるスタイルとなって、重い荷を担いだときの疲労が大幅に軽減されるようになりました。

 現在の縦長型ザックは、その構造から、ソフトパック、エクスターナルフレームパック、インターナルフレームパックの三種に大別できます。

 ソフトパックは文字どおりフレームなどを使わず、本体のパックに直接ショルダーベルトやヒップベルトなどのハーネスが取り付けられたものです。キスリングザックも構造からいえば、ソフトパックに分類されます。ソフトパックは、海外遠征のアタック用ザックなどに、よく使われます。ソフトパックは、文字どおりトートバックやズタ袋と同じようにシンプルな構造なので、パッキングの自由度が高いのが特徴です。しかし、裏を返せば、パッキングが難しいということにもなります。フィールドへ出かけるために初めて選ぶザックとしては、あまりお勧めではありません。

 エクスターナルフレームパックはバックパックと言ったほうがわかりやすいかもしれません(本来バックパックキングとはザックを背負って歩く行為全般を指し、"バックパック"は広義の"ザック"と同義なのですが、日本ではなぜかエクスターナルフレームパックの代名詞として定着しています)。

 これは背負子型の金属もしくは樹脂フレームにパックとハーネスをジョイントしたものです。昔、バックパックを背負って北海道を徒歩旅行する人たちを『カニ族』なんて呼んでいたことがありましたが、フレームむき出しのゴツいエクスターナルフレームパックを背負うと、甲殻類になったような気がしたものでした。

 エクスターナルフレームパックはザック本体が直接背中に触れないので、多少ルーズにパッキングしても背負い心地はあまり変化しないという利点はあります。しかし、フレームがむき出しで突起が多いこのスタイルでは、タイトな場所だと、木の枝や岩に引っかけやすいのが欠点です。

 ベースキャンプまで比較的開けたフィールドで、メインザックはベースキャンプまで必要な装備を運ぶコンテナと割り切れるなら、このタイプはベストでしょう。

 インターナルフレームパックは、ザック本体にフレームが内蔵され、これがザックの形を保つと同時に人間が背負いやすいように背中のカーブに合わせてフィットさせる機能を持っているものです。比較的パッキングしやすく、ウォーキングから本格的な登山までカバーしており、日本のフィールドの条件にいちばんマッチしているザックといえます。ユーザーの体型や荷物の容量に合わせてハーネスがアジャストできるので汎用性も高いのが、このタイプの特徴です。欠点をあげるとすれば、ザック本体にフレームが内蔵されているため、その分、外形のわりには容量が少なくなってしまうこと。それにザック自体の重量がソフトパックに比べて重くなることです。インターナルフレームザックは、同じ容量の他のザックに比べ、本体の外寸がやや大きくなります。

 日本のフィールドの条件を考えると、個人的には、メインザックとしてはインターナルフレームパックをお勧めします。

 どんな装備でも、実際にその品物を手に取っ手選ぶことが大切です。とくに自分の体に密着するザックは、ユーザーの疲労度を大きく左右するものですから、選ぶときは、実際にショップに足を運び、ダミーの荷物が入っているものを背負って、背中へのフィッティングやストラップ類の使い勝手を十分に吟味することが大切です。

 また、アウトドアの装備を選ぶ際には、"軽量性"がポイントだと申し上げましたが、それはザックも例外ではありません。とくにフレームパックは、ザック自体の重量がけっこうありますから、ショップで手にとるときに、重さもしっかりチェックしましょう。

 ソロでフィールドに出るよりは、グループで出かける機会が多いという場合は、テントやコッヘルといった大物装備は共同装備として分担できるので、必ずしも全員が大型のザックを使う必要はありません。例えばカップルでキャンプする機会が多いのなら、荷物をたくさん背負う男性は60g〜70g容量のインターナルフレームパック、女性は30g〜40g容量の中型インターナルフレームパック(ソフトパック)という組み合わせが合理的でしょう。

 

 

●サブザック

 キャンプをベースに、クライミングやバードウォッチングなどプラスアルファのアミューズメントに出かけるときに必要となるのがサブザックです。先に紹介したように、ぼくは、カリマーやミレーのザックをよく使います。サブザックとして考えられるのは、中型のアタックザック、デイパックなどの小型ザック、ウェストバック、あるいは収納部をたくさん設けたマウンテンパーカなどです。いずれをチョイスするかは、何をするかによって決まってきます。

 キャンプをベースに周辺を散策する程度なら、大きめのウエストバックやデイパックで十分です。ベースから比較的離れた場所にまでトレッキングするなら、雨具などかさばる必要装備も増えるので、中型のアタックザックが適当でしょう。

 また、まだ自力でラフロードを歩くのがおぼつかない幼児連れなら、ベビーキャリーを利用すると行動半径がだんぜん広くなります。これは、エクスターナルフレームパックと同じようなもので、パックの代わりに赤ちゃんを乗せるキャリアを装備したものです。

・追記

  ぼくの現在のラインナップは、メインパックにmont-bell(モンベル)のZEROPOINT『WB.トレッキングパック70』というインターナルフレームパック(容量70g)、サブザックにKARRIMOR(カリマー)の『ホットアイス』というアタックザック(タイプはソフトパックで容量30 g)、同じく軽いトレッキングやMTB用に二種類のサイズ(10gと、5g)のウエストバッグ、といった形で落ち着いています。この中でアタックザックがいちばん使用頻度が高く、かなりくたびれてきたので、新しいものを物色中です。

・追記

  長年愛用してきた『ホットアイス』は、ついに内側の防水コーティングが剥離してきたので、現役を退きました。その後継に選んだのは、MILETT(ミレー)の『エレバス』というインターナルフレームパック(容量35g)です。『ホットアイス』に比べ、ザック単体の重量と嵩はありますが、フレームによって型がしっかりしているで、パッキングがかなり容易になりました。フレームも樹脂製なので、ザック単体で「重い」と実感させるほどでもありません。このモデルには、縦方向に長い容量45gの『サウスポール』というタイプもあります。背中の長い(座高が高いといったほうがいいかな?)、男性には『サウスポール』をメーカーやショップでは推奨していますが、ぼくは、この手のサブザックをMTBやオフロードバイクに乗るときに使うことが多いため、シートに着座した姿勢でザックのボトムが当たらないように、あえて短いタイプを選びました。とくに、オフロードバイクに乗るときには、ザックのボトムがシートに触れていると、ギャップでバイクが突き上げられたときに、ザックが躍り上がってしまうのです。普通にウォーキング主体に使うには、ぼくくらいの上背(身長178cm)があると、どちらかというと女性向けに設定された『エレバス』は、ハーネスの取り回しがちょっと窮屈な気がします。

 

●ハーネスシステム

 キスリングザックから縦型のアタックタイプへという変革の中で、もっとも変わったのがハーネスシステムです。

 キスリングザックでは単にザックのトップとボトムの両サイドを結ぶショルダーベルトがあるだけで、荷重はすべて両肩にかかる構造になっていました。重い荷を背負うときには、ショルダーベルトが肩に食い込んで、肩が擦り切れるため、タオルを挟んだり、頻繁にベルトをずらして背負ったり、苦労したものでした。

  縦型ザックになると、ショルダーベルトの役割は、背中の適切な位置に荷を固定させることがメインとなり、肩への荷重はぐっと少なくなって、キスリング時代の苦労はまったくなくなりました。荷の重さを受け止めるのはウエストベルトの受け持ちとなり、パッキングから、ザックの背負い方、歩き方まで大きく変わりました。

  中型以上のザックは、どれも太く厚いウレタンのパットが入れられたヒップベルトを装備しています。これをちょうど腰骨に乗せるようにフィットさせて、腰で荷重のほとんどを受けるようにするのがザックの正しい背負い方です。ショルダーベルトだけの場合に比べると、体の重心位置に近いところに荷重が集中するため、重さを感じずにすみ、さらに歩行やクライミングの際にバランスをとりやすくなっているのです。

  ハーネスシステムの最大の利点は、背負う人の身長や体格に合わせて微妙なアジャストが可能なことです。荷重の大部分がかかるウェストベルトを腰骨の上に載せて位置に合わせ、さらにショルダーベルトとザック本体のジョイント部分を肩の高さに合わせます(各メーカーでアジャストシステムは微妙に異なります)。それで、ほぼどのような体型でも荷が背中にぴったりとフィットするはずです。調整の済んだザックを背負っている姿を横から見ると、ちょうど背中に子供をおぶった形になります。それが、人間工学的にもっとも安定するスタイルというわけです。

  さらに、最近のザックは、左右のショルダーベルトを胸のあたりでジョイントするチェストベルトが装備されています。これは、左右に広がろうとするショルダーベルトを引き戻して、肩が開くのを防止する役割をはたしています。
  ハーネスシステムは、フレーム、背面パッド、ショルダーベルト、チェストベルト、ウエストベルトと、その相互補完機能を指しています。
  ハーネスは、確実に自分の体に合わせてアジャストしておく必要があります。ショルダーベルトやチェストストラップは、歩行中でもフィッティングを調整できるので問題ありませんが、ショルダーベルトの取り付け基部のアジャストや、ウエストベルトの高さ調整は、背負ったままではアジャストできないので、フィールドで使い始める前に必ず調整をしておかなければなりません。とくにメインザックは、大きな荷重がかかるので、フィッティングがルーズだと、荷の安定が損なわれ、体力を消耗することになります。

ハーネスシステムは、自分の体にぴったりフィットするように調整してこそ真価を発揮します。ウエストベルトとともに、ショルダーベルトの取り付け位置を調節し、さらに、ザックが体から離れないように、本体をショルダーベルトに引き寄せます。ちょうど、子供が背中におんぶしたような形でザックがフィットしていれば、長時間、重いザックを背負っていても疲れが少なくて済みます。

 

 
●テント

 テントもザックと同じように技術革新でドラスティックな変化を遂げた装備です。グランドシートと本体が別で、設営には経験とコツがいった昔の家型テントはすでに過去の遺物。現在のテントは、グランドシートと本体が一体となりポールによって立ち上がるセルフスタンディング(自立)型となっています。

  グランドシートと本体との間に隙間がないので、家型のように、テントの周りに排水溝を掘る必要もなく、テントを立ち上げてしまっから設置場所を決定できるようになりました。

  オートキャンプの場合は別として、ベーシックなキャンプで使うテントは、軽く、かさばらず、設営も簡単なクロスフレームのドームテントがお薦めです(といっても、ほとんどのテントがこのタイプだから、そのうちのどれを選ぶかという問題になるわけですが)。

  こと、テントに関しては、安物買いの銭失いならぬ命を失うことにもなるケースがあるので要注意です。ふつう、テント本体はグランドシート部がウレタンコーティングの防水ナイロン生地で、ウォール部分は通気性のあるリップストップ(引き裂き防止)ナイロン生地で作られています。粗悪品のテントは、ウォール部の通気性が十分でなく、テント内で調理をしたときに酸欠や一酸化炭素中毒をおこしやすいのです。

  雨天などへの対処は、テント本体の上に張るフライシートが、その機能を受け持ちます。設営の仕方は別の章で詳しく説明しますが、テント本体との間に隙間を持たせてフライシートを張ることで、通気性と防水性を両立することができる仕組みになっているのです。

  最近では、ゴアテックスなどの防水透湿素材を使い、フライシートを省略したテントもあります。これは、総量で本体フライシート別体式のものより軽いというメリットはありますが、試したかぎりでは、別体式のもののほうが、本体とフライシートとの間のエア層ができることで温かく感じられ、また、フライシートが作り出す前室や後室のスペースが有効に活用できるので、こちらのほうがお勧めです。

  形で分類すると、シンプルなドーム型の他に、そのバリエーションで防風性と居住性を高めたジオデシックドーム型、さらにシェルタータイプ、簡易テントのツェルトなどに分けられます。オートキャンプ用では、頑丈なフレームで立ち上げるオーナーロッジタイプがずっと主流でしたが、ポールに使う金属材料の発達などにより、ドームタイプでも十分な強度をもたせられるようになり、オートキャンプ用テントも設営の簡単なこちらに主流が移りつつあります。

  テントには、普通、そのテント内に何人の人が収容できるか目安が出ています。ただ、この人数は、テント内のスペースをぎりぎりまで使ったときに収容できる人数なので、実際の使い勝手を考えると、収容人数+1程度の余裕をみておいたほうがいいでしょう。とくに山岳テントの場合は、保温性を重視して普通のテントよりタイトに作ってあるので注意が必要です。

  例えば、収容人員2〜3人用という表示のテントは、そこに3人が入ると、シュラフを三つ並べただけで目一杯になってしまいます。2〜3人用とあったら『快適に使用できるのは2人まで、場合によっては3人での使用も可能』という意味です。

  居住性はとりあえず置いといて、ソロで徹底して軽量化を図りたいというむきには、シェルターやツェルトの使用がお勧めです(ただし雨で終日テント篭もりになったりすると、じつに惨めな気分になるのが欠点。閉所恐怖症の人には凶器になるかも)。

  ぼくがとくにお勧めするのは、フライシートが大きく張り出し、前室として使用できるデザインのものです。それから、各論に入ってしまいますが、テントを地面に固定するペグは余分に用意すること。また、岩場などでペグが効かない場合に備えてアンカーを固定する張り綱も必需品です。

・追記
  ぼくは、古いダンロップのドームタイプ(3?4人用)、モンベルのアルパインテント(3人用)、それに小川テントのツーリングテント(ソロ用)の三種をシチュエーションに応じて使い分けています。

 ダンロップは、高校時代から、もう20年以上愛用しているものですが、ポールの破損が一度と、たき火の火の粉でフライシートに穴があいたのを補修したくらいで、いまだに現役で頑張っています。クロスフレームに本体を吊り下げる構造のこのテントは、設営が非常に容易なのが特色です。

  モンベルのアルパインテントは、本格山岳での使用を主目的に設計されていて、耐風性が非常に高いのが特徴です。また、喚起バランスも良く(内部の暖まった空気を外へ逃がしにくいけれど、必要な外気循環性は確保されている=使われている生地やそのコーティング、設計ジオメトリーがいい証拠)、山岳キャンプのときは、もっぱらこれを愛用しています(現在は、モンベルのラインナップが変わって、ぼくが使っているタイプのモデルはなくなりました。代わりに、オーソドックスなクロスフレームのドームタイプで生地にゴアテックスを採用した『アルパインドーム』と独特のフレーム構造で居住空間を広くとった『キーバテント』、二つのラインナップとなっています=1999年2月現在)。

  ツーリングテントは、テントそのものの性能はさほど高くなはありませんが、オートバイやMTBでツーリングするときの基本条件である、軽量、コンパクトという要素では抜きんでています。

 

 
●テントマット

 グランドシートの上に直接シュラフを置いては、地面の凸凹が背中に当たったり、地面からの冷気によって安眠することは不可能です。そこで必要となるのがテントマットです。

 テントマットは、大別すると三種類あります。ひとつは、エアーマット。そして、エンソライトなどの合成樹脂のクローズド・セル・フォームを使ったマット。さらに厚手のフォームパッドを気密性の高いシェルに包んだエアー&フォームタイプのマットです。

 エアーマットは文字どおり風船状に気室の中に空気を入れてクッションにするマットです。これは、空気を抜けばコンパクトに収納できるのが特徴ですが、岩場などでクッション代わりに使ったりするとパンクの恐れがあります。全体が一気室のものでは、一ヶ所がパンクしただけで使い物にならなくなってしまうため、いくつかの気室に分かれているのがふつうです。また、雪の中などでは、マット内部のエアーまで冷えて断熱性が低下することがあります。

 クローズド・セル・フォームのマットは、ウレタンと発泡スチロールの中間のような素材を想像してください。これはすでにフォームの中に空気を含んでいるので、後から空気を入れて膨らます必要はありません。持ち運びには、折りたたんだり丸めてザックのトップにくくりつけたりします。バックパッカーが、ザックの下のフレームにくくりつけているあれがそうです。パンクの心配はなく、断熱性も高いのが特徴ですが、かさばるのが難点です。三つのタイプの中ではいちばん廉価なタイプです。

 エアー&フォームタイプはウレタンフォーム(スポンジ)を気密性の高いシェルで包んで、エアバルブを設けたマットです。バルブを開けて、空気を吹き込んでウレタンフォームを膨らまして使います。エアマットの収納時のコンパクト性とクローズド・セル・フォームの断熱性の良さを兼ね備えたもので、万が一パンクしても、ウレタンフォームそのもののロフト(厚み)で、そこそこの寝心地と断熱性を確保できます。ただし、このタイプは他の二種に比べて少々値が張ります。

 最近ではテントの外側に敷く断熱シートも売り出されています。これを使ったからといってテントマットが不要ということにはなりませんが、断熱効果はかなりアップします。また、テントのメンテナンスでは地面に接していたグランドシートの汚れがいちばん頭を悩ますところですが、これを使用すればその問題は解決します。

・追記
  ぼくは、テントマットは、クローズド・セル・フォームタイプを愛用しています。モンベルの『キャンピングマット』というモデルで、全身用の長さがあります(軽量化を重視する登山では、上半身だけをカバーする半身用を使うこともあります)。これを、ぼくはテントの中だけでなく、岩場や地面の上に直接敷いて昼寝したりしますが、70デニール(デニールとは生地の糸の太さの単位です。詳しいことは後にご紹介しますが、数字が少ないほど太い糸だと覚えておいてください)ナイロン生地は丈夫で、パンクの経験はありません。 

 
●シュラフ

 シュラフの性能は、そのままインシュレーター(中綿)の性能と言いかえてもいいでしょう。インシュレーターがどれだけ多くのデッドエアー(対流しない空気)を閉じこめられるかが、保温性の鍵となるからです。

 かつては、コンパクト性と膨張復元性においてどんな化学繊維も、天然素材のダウンにかないませんでしたが、現在は化学繊維でダウンに匹敵する性能を有するものが数多く出てきています。

 化学繊維のインシュレーターは、汚れに強く、メンテナンスが楽なのが最大のメリットです。それでもまだ保温性とコンパクト性の点ではダウンに歩があり、厳冬期用、遠征用といった用途のシュラフには、インシュレーターにダウンが使用されています。

 シュラフは、形から見ると、レクタングラータイプ(封筒型)とマミータイプ(ミイラ型)に大別できますが、この項で紹介しているようなシチュエーションで使うには、シュラフ内部の空気の対流が少なく保温性の高いマミータイプがお薦めです。よく、マミータイプは窮屈で暑苦しいという人がいますが、今の製品はほとんどが首元から足先まで開くサイドジッパーでフルオープンに出きるうえ、ダブルスライダージッパー(二つのジッパーがついていて、上からもしたからも開けられる)によって、足の側からのオープンも可能なので、レクタングラータイプよりはるかにフレキシブルです。

 かつては、シュラフといえば、サマーシーズン用、スリーシーズン用、厳冬期用といったおおまかなグレード分けでしたが、最近のしっかりしたメーカー製シュラフは耐寒温度別に細かくグレードが分かれていて、キャンプする時期と個人個人の体感の差によって適当なものを選ぶことができるようになっています。

・追記          

 ぼくは、耐寒温度が−15℃と0℃のグレード、二つのシュラフを使っています。いずれもインシュレーターはダクロンホロフィルUで、前者は晩秋から冬を挟んで春先まで、後者は春から夏を挟んで秋まで使います。厳冬期の冬山では、この二つを組み合わせてシュラフカバーに入れたり、前者にシュラフカバーの組み合わせで、さらにダウンパーカとダウンパンツを着込んで潜り込むといった変則技を使います。

 

●シュラフカバー

 ゴアテックスなどの防水透湿素材製のシュラフカバーが一枚あると便利です。 これは、本来はシュラフ本体にかぶせて防寒用カバーとして使うものですが(ほぼ10℃分くらいは耐寒性能をアップできます)、夏期はカバーだけを単体でシュラフ代わりに使ってもいいし、ふいのビバークに備えて、日帰りのフィールド行にもシュラフカバーをしのばせて行くのもお勧めです。

・追記

 ぼくは、長年マミータイプのゴアテックス製シュラフカバーを愛用しています。夏場に、標高がさほど高くないところへ行くような場合は、シュラフを省いて、ほとんどこれだけで用が足りています。

 
●ガソリンストーブ

 キャンピンググッズ選びでいちばん頭を悩ますのがストーブです。現在主流はガソリンを燃料とするものとガスカートリッジ燃料のものに大別できますが、そのどちらのタイプを選んだらいいのか?雑誌などでは、こういった道具の使用に慣れていない人は、取り扱いの簡単なガスカートリッジタイプ、ある程度慣れている人ならばガソリンストーブを選ぶといいと紹介されることが多いようです。しかし、取り扱いに関してガソリンストーブのほうが特別難しいわけでもないし、慣れないと危険であるとも思えません。

 ガソリンストーブは、基本的にはホワイトガソリンが指定燃料とされていますが、レギュラーガソリンでも使用できる(はじめからレギュラーガソリンが使用できるとうたわれているモデルもあります)ので、車でキャンプ地まで移動することが多ければ、はじめからガソリンストーブを選んだほうが合理的といえます。

 また、2、3日以上のキャンプが多い場合にも、ガスカートリッジストーブでは予備のカートリッジをいくつも持たねばならずかさばってしまのに対して、ガソリンなら燃料ボトルを1、2本用意すれば済みます。

 使用法は、後に詳しく説明しますが、「ガソリンストーブがガスカートリッジタイプに比べて使いにくい」といわれる由縁は、ほとんどがポンピング不足で炎が安定しないことを不安に感じるためでしょう。バルブを開いて着火すればすぐに使えるガスストーブとは違って、ガソリンストーブは炎が安定するまで若干時間がかかります。ですが、ポンピングをしっかりして、多少炎が不安定でも、焦らず待っていれば、すぐに使用可能となります。

 ガソリンストーブで唯一注意したいのは、タンク一体型のストーブをザックに収納するときに、バルブを確実にオフにすることです。ぼくも経験がありますが、うっかりバルブを開いたままで収納して、ザックの中がガソリンまみれという笑えない事態があります。

・追記

 ぼくは、ガソリンストーブは20年以上もコールマンのスポーツスターを愛用してきましたが、最近同じくコールマンのPeak1Apex2という燃料タンクとバーナーが別体になったタイプに切り替えました。こちらのほうが軽量、コンパクトで、ちょっとしたトレッキングに持っていくのにも苦になりません。タンク・バーナー別体式のものはMSRなどに昔からありました。その軽量、コンパクト性にはひかれましたが、今までの製品では、プレヒートが必要だったり、火力調節ができなかったりと不便なことが多く、二の足を踏んでいたのです。このコールマンの製品は、そんなハンデをすべて払拭したもので、十分にニーズを満たしています。といっても、それでスポーツスターが引退したわけではなくて、大人数のキャンプやオートキャンプのときには、こちらも、現役で活躍しています。

 

●燃料ボトル

 食事のメニューによっても変わりますが、コンパクトガソリンストーブのタンクを満タンにして、まかなえるのは、ソロの場合で2〜3日。それ以上の期間、あるいはパーティとなると3日のキャンプでも予備の燃料が必要となります。ガソリン燃料は樹脂などに対して腐蝕性があるので、専用の燃料コンテナを使わなければならなりません。アルミやポリエチレン製の燃料ボトルが、いろいろな容量のものがあって使いやすいでしょう。ボトルと合わせて、燃料を注ぐためのファネル(ジョウゴ)や、ボトルキャップとつけかえて使う注油フィラーも用意しておくと便利です。

・追記

 前記のようにタンク・バーナー別体式のストーブを使っているので、必然的に燃料ボトルも用意しています。ストーブに付属のコールマン純正1gサイズと、SIG製の同じく1gボトルを予備用としています。予備ボトルは、口のサイズが規格に合っているものなら、そのままストーブに接続可能なので、これは、従来から使っていたものをそのまま流用しているものです。

 

●ガスカートリッジストーブ

 ガスカートリッジストーブは、液化ブタンガスを充填したカートリッジに、バーナーを装着するだけで使用できる簡便なストーブです。使用法は、家庭用のカセットコンロなどと同じなので、初めて使用する人でも不安はありません。従来のガスカートリッジストーブはガソリンストーブとの比較で、火力が弱いとされていましたが、今は両者には火力の点ではほとんど差はなくなっています。

 また、寒冷地では、気化熱も手伝ってタンクが極度に冷やされ、火力が低下するという弱点がよく指摘されますが、より低温で気化しやすくした寒冷地仕様の燃料やバーナーの熱をタンクに伝導して温めるパワーブースターなどの登場で、この弱点もほとんどクリアされています。

 ガスカートリッジストーブでいちばんネックとなるのは、長期のキャンプで予備のカートリッジをいくつも用意しなければならなくてかさばってしまうことです。ガソリンなら予備ボトルは何度でも使用できますが、ガスカートリッジは再充填できないので、空になったカートリッジをゴミとして持ち帰らねばならないのも問題です。

 それなりに経験の深いキャンパーは、ガソリンストーブとガスカートリッジストーブの両方を持っていて、それを使い分けるケースがほとんどです。一日二日のキャンプで予備のカートリッジを持つ必要がないならガス、予備燃料が必要となる場合には、ガソリンといった具合です。また、何人かのパーティの場合は、両方を持参して、ディナータイムには両方使って効率よく調理し、キャンプをベースにショートトレッキングするときには、手軽なガスタイプをサブザックに入れていくといった形で使い分けています。

 くれぐれも注意したいのは、使用済みのガスカートリッジをゴミとして捨てる場合、本体に穴を開けるか、もしくは付属キャップについているガス抜きで、残存ガスを完全に放出することです。毎年、必ず何件か、使い捨てされたカートリッジを焼却するさいの爆発事故が報告されています。

・追記

 ぼくは、ガスカートリッジストーブは、EPIの『BPS』とプリムスの『2243』他いくつか持っています。今もっぱら愛用しているのは、プリムスの大火力タイプ『2243A』です。これは、本来自動着火方式なのですが、接点が最初に壊れてしまい、手動着火で使っています。そのお手軽さから、トレッキングのときなどは、こちらをメインにしてきました。でも、前述したAPEX1というガソリンストーブを手に入れてからは、これが手軽に使えるので、あらゆるシチュエーションでApex2を使うことが多くなっています。
 

 
●アルコールストーブ

 液体アルコールを燃料としたストーブは、過去に何度か使ったことがありました。でも、いずれも火力が弱く強風下での使用が実質的に不可能な上、燃料の揮発性が高くて、輸送中に失われる分が多くて、とても実用にならず、数度で使用をやめてしまいました。最近、スウェーデン製のTRANGIAストームクッカーを手にいれて、重宝しています。これは、旧来のアルコールストーブにあった欠点はほとんど解消されています。構造は、故障しようがないほどシンプルで、ガスストーブに匹敵するほどの大火力、パッキンがしっかりしているので燃料の蒸散もなし。中蓋の開閉具合で火力の微妙な調節もできるので、お茶を入れる程度のショートトレッキングには、もっぱらこれを愛用しています。なんといっても、これに勝る軽量コンパクトなストーブはないのが、最大のメリットです。

 

●ランタン

 ランタンと聞いてイメージされるのは、コールマンのツーマントルランタンなどに代表される大光量のガソリンランタンでしょうか。もちろん、このタイプは、重くかさばり、ザックに入れて持ち運ぶといった用途には現実的ではありません。ガソリンランタンは、案外このタイプが多くて、コンパクトランタンというと、ガスカートリッジランタンの代名詞になっています。

 ガスカートリッジランタンはコンパクトなわりに光量もガソリンに劣らず、ザックに入れて持ち運ぶのには最適です。ストーブとランタンの燃料は共通化したほうが合理的に思えますが、ランタンの燃料消費はストーブに比べてずっと少ないので、満タンのガスカートリッジで2、3日は大丈夫。だから、ストーブはガソリンでランタンはガスという組み合わせも問題ありません。

 ランタンを使う場合に注意しなければならないのは、一度使ったマントル(光源となる袋状のガラス繊維)はたいへん脆くなるので、強い衝撃を与えたりしないようにすることです。予備のマントルは必ず用意しましょう。ちなみに、メーカーごとに専用のマントルが用意されていますが、他社製のマントルでも何とか工夫してバーナー部にくくりつけてしまえば使用可能です。プリムス、EPIといったガスランタン用のマントルのほうが、ガソリン用のものより、光が白っぽく明るく感じられます(ただし、こちらのほうが若干高価)。

 最近では、電池式の蛍光灯もけっこう種類が出ています。取り扱いもメンテナンスも簡単でお手軽ではありますが、個人的には、あの冷たい光はアウトドアにはそぐわない気がして、手を出していません。

 アウトドアらしい雰囲気をより楽しみたい、あるいは、もっと荷物を軽量化したいという向きには、専用の蝋燭を光源とするキャンドルランタンがお薦めです。重量は200gあまり、テント内に吊るしても邪魔にならないし、楽に本を読めるくらいの光はこれだけで確保できます。灯芯はホヤに守られているので、少々の風なら消える心配もありません。

・追記

 ぼくが今使っているのは、プリムスのガスカートリッジランタン『2245』が二台、キャンドルランタン一台、そして、コールマンのツーマントルタイプが一台の計4台です。ベーシックなキャンプで使うのは、もっぱらプリムスで、ソロの山行で荷物をなるべく軽量化したい場合はキャンドルランタンのみ、オートキャンプではツーマントルと使い分けています。個人的には、プリムス用マントルの光の色合いがいちばん気に入っています。

 

●コッヘル

 アルミやステンレス、あるいはチタンなどの素材で作られた、軽くコンパクトなキャンプ用鍋食器セットがコッヘルです。作る料理やパーティの人数よって、コッヘルのコンビネーションは無数に考えられます。

 ソロのスタンダードなスタイルとしては、φ20cm程度の鍋にフライパン、それより一回り小さな湯沸かし用鍋、さらにシェラカップなどの飲物用カップといったところ。これをベースとして、人数が増えるにしたがって、鍋の大きさや数を増やしていくといいでしょう。

 目的が登山のように限定されているときは、軽量化に徹して、小型の鍋と皿にシェラカップというシンプルな組み合わせにすることもあるし、場合によってはシェラカップ一つだけで湯沸かしから調理まですべてまかなってしまうケースも考えられます。

 これからはじめてコッヘルを購入しようというのなら、初めに2、3人用のセットを買うといいでしょう。ソロでは、その中の大鍋と皿の一枚を外して使うわけです。また、アウトドアでは定番となっているシェラカップは、直接火にかけられ、食器としても手ごろな上、場合によってはオタマやスコップとしても使えるので、とても重宝します。このカップを使う度に、100年以上も前にこのカップを考案したシェラクラブの面々には、まったく頭が下がります。

 具体的にどんなものが良いと断言できませんが、コンパクトストーブを作っているメーカーの製品は、コッヘルにストーブやバーナー部を収納することを念頭において作られているので、装備のコンパクト化という点で一考に値します。

・追記

  ぼくは、20年のアウトドアライフのうちに、コッヘルのたぐいを山のように溜めこんでしまいました。シンプルな装備だけに、どれも帯に短し襷に長しといった感じで、しかもアウトドアグッズとしては、お手軽に購入しやすい値段なもので、店頭で見ると、つい試してみたくなってしまうのです。でも、使うものは、ほとんど固定しています。ソロの場合は、先にあげたように、小型の鍋と皿、シェラカップをおのおの一つずつ。二三人のパーティなら、φ20cmの丸鍋とφ20cmのフライパン、それに深皿二つ、シェラカップといったところ。オートキャンプになると、それこそ中華鍋まで動員して行くことになります。

 
●食器

 「自然の雰囲気を堪能するために、木の枝を削って箸をつくるといい」なんて、雰囲気重視の解説書にあったりしますが、現実にはそんな悠長なことをやってる余裕はあまりないし、第一、生木を削って箸にすると樹液の嫌な匂いが食べ物や指についたりして、イメージと現実ではけっこうギャップがあったりします(クロモジの枝で楊枝を作ったりすると、香りも良くて、雰囲気ありますが……)。そんなわけで、フォークやスプーンといった食器もやはり、キャンプ用のものをはじめから用意したほうが無難でしょう。

 とりあえず、一人分ずつ、携帯用のコンパクトなフォークとスプーンがあればこと足ります。フォールディングナイフと一体式になっているものもありますが、汁ものなどを食べると、ジョイント部が汚れてしまい、後の処置が面倒なので、それぞれ単体としてセットになっているものがお勧めです。

・追記

 ぼくが最近愛用しているのは、スペイン製の『AITOR』というセットです。これは、アーミーナイフと、スプーン、フォークが専用のシースに収納されているものです。スペイン軍の正式装備品で、非常に堅牢な作りです。

 

●ナイフ

 調理の他、細引きを切ったり、たきつけ用の火口を作るのに薪を細かく裂いたりと、キャンプにおいてはナイフはなくてはならないツールです。ブレード大小、缶切り、栓抜き、キリ、ワインオープナーなどの機能が一つになったアーミーナイフと、ブレードが比較的厚くナタ代わりにも使えるフォールディングナイフの2本を常備していれば、ほとんどあらゆる用途をカバーします。

 アーミーナイフでも、多機能を売りにして、30も40もの機能を付けたものがありますが、これは様々なブレードやスクリュードライバーの類を収納しているためにグリップが異様に太く、とても使いやすいものとはいえません。こういったものは、本来、ナイフメーカーが自分の会社の技術力をアピールするために作ったコマーシャル品で、メーカー自体、これをフィールドで使うユーザーがいるなどとは思っていないはずです。本来コンパクト性が売り物のアーミーナイフをわざわざかさばるコマーシャル品を抱えてアウトドアで難渋して使っている人がいますが、オプション好きな日本人の見本を見るようで、哀れな気さえします。

 アーミーナイフといえばビクトリノックスというくらい、スイスのこのメーカーはメジャーですが、ここの製品なら、ソルジャー、キャンパーといったモデルが機能性とコンパクト性で、最適なバランスのモデルでしょう。

 また、サバイバルナイフなどの刃渡りの長いごついボウイナイフを持っている人も度々見かけますが、これは、かさばって重い上で実用的とはいえません。ナタ代わりに使うには、ブレード(刃)が薄く、欠けやすいので危険です。シースナイフ(刃が畳めないタイプ)なら、刃渡り5,6cmのものが実用的です。

・追記

 ぼくが愛用しているのは、アーミーナイフとしては、前述の『AITOR』の他に、ビクトリノックスの『キャンパー』、ワンブレードのナイフはBACKの『フォールディングハンター#110』です。AITORはキャンプでの使用がメイン、ビクトリノックスはキャンプ以外にも、日常出かけるときの必需品となっています。#110は、高校生の頃から20年以上使っているものですが、440c鋼の切れ味は、買った頃とまったく変わりありません。こいつは一度秋田の沢でなくし、あきらめていたら、数日して沢の下流で発見するという奇跡的な経験をした、まさに愛着の品です。

 ほかに、妻が愛用している『ALMOR』のフォールディングナイフがあります。これは、ごつい#110と比べると小ぶりで刃も薄いものですが、440c鋼よりも硬いATS34鋼の切れ味と堅牢性は、まったくヒケをとりません。

 ぼくは、ナイフマニアというわけでもないのですが、ずっと昔から、日本のナイフメーカーとしてトップクラスの相田義人さんのシースナイフが欲しいと思っています。相田さんは、カスタムナイフの神様といわれるラブレスに直接師事したカスタムナイフメーカーで、飾り物ではなく、ハードな使用に耐えてしかもコンパクトで優美なフォルムのナイフをリリースしています。そのうち、ぼくの手の大きさと形、用途を明確にして、オーダーしたいと思っています。

 

 
 

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